2011年05月02日

ブルーもしくはブルー  山本文緒


なんとブルー尽くしな日々です。
昨日観た映画は「ブルーバレンタイン」。
そして本も「ブルーもしくはブルー」


おひさしぶりな山本文緒さん作品。
これは実はUstの課題図書としてあげられたものなのです。
こちらがたまに参加させてもらっているUst配信のブログ
USTREAMの雑談放送告知
ゆるい雰囲気で、とても男前な声なのです。


内容(「BOOK」データベースより)
広告代理店勤務のスマートな男と結婚し、東京で暮らす佐々木蒼子。
六回目の結婚記念日は年下の恋人と旅行中…そんな蒼子が自分のそっくり「蒼子B」と出くわした。
彼女は過去の記憶をすっかり共有し、昔の恋人河見と結婚して、真面目な主婦生活を送っていた。
全く性格の違う蒼子Aと蒼子B。
ある日、二人は入れ替わることを決意した。
誰もが夢見る「もうひとつの人生」の苦悩と歓びを描いた切なくいとおしい恋愛ファンタジー。万華鏡のような美しい小説。


   **  **  **

これはどう読むかで感想も変わってきそうです。
私は同性なので、どっぷり女性小説ものとして読みました。

あの時こうしていればどうなっていたかしら……
とふと考えてしまうときってありますよね。
まさに、この登場人物の蒼子Aはそう思っていたんです。
しかも、自分のした決断が間違っていたんじゃないか?と考えているときに。

別の人と結婚をしていたら…と思っていたら
自分にそっくりな人、いや、もう一人の自分がその男と結婚して幸せそうに暮らしていた。
私は選択を間違ったのだろうか……。

私もふと、「あの人と別れなかったら、どうなってたのかしら」と考えることはあっても、
すぐさま、「いや、多分時間の問題で結局別れることになるのよ」
なんて打ち消します。
淡い期待?希望?……ないねー。
今の自分ありき、と考えてますから。


今の自分と目の前のものを大切にしないと。
無いものねだりはよくないです。
誰かに必要とされて、愛されたいと願う蒼子Aと
自由を渇望する蒼子B。
憧れていたそれぞれのものは、得ることで幻滅へと変わる。

けど、最後にはほんのりと光が見える小説でした。


口の中に、とても苦く嫌な味がした。
欲しくてたまらなかった、自由の味が、それだった。




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ラベル:山本文緒 小説
posted by オハナ at 16:08| Comment(2) | TrackBack(0) | ヤ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月21日

半落ち  横山秀夫



内容(「BOOK」データベースより)
「人間五十年」―請われて妻を殺した警察官は、死を覚悟していた。
全面的に容疑を認めているが、犯行後二日間の空白については口を割らない「半落ち」状態。
男が命より大切に守ろうとするものとは何なのか。感涙の犯罪ミステリー。


     **   **   **

現職警察官が妻を殺したと自首をしてきた。
アルツハイマーになった妻。
事件は息子の命日に恒例の墓参りを2人で行ってきた日に起こった。
“息子の墓参り”へ行っていないと騒ぎだした。
2人で行った、と言っても病気のせいで忘れてしまっている。
“息子の命日を忘れるなんて母親じゃない。人間じゃない”
『母親のままで死にたい』
妻に請われて現職警察官・梶は妻を殺した。
嘱託殺人。

しかしながら、事件の2日後に自首してきた梶だったが、
事件後から自首までの2日間の行動は完全黙秘だった。
“完落ち”ではなく“半落ち”状態。

映画は観ていないのですが、寺尾聡さんが印象的だったので
あくまで梶は寺尾さんで読んでいました。

章立てに少し工夫があり、梶視点の章は一切ないのです。
警察官、検察官、警察記者、弁護士、裁判官、刑務官。
事件後、梶と関わっていく人物たちの視点で書かれています。

事件後の空白の2日間については完全黙秘をする梶。
不利な事が何かあるのではないか、と警察は思うのだが
「そっとしておいてくれ」と言う梶。
一時は自殺を考えた梶がなにゆえ「生きる」ことにしたのか。

その謎自体も気になったのですが、
視点からなる人物の葛藤や現場での混乱が面白く読めました。
それぞれの上司や組織との確執、組織に丸めこまれることになるが
結果的には梶が守りたかったものが公になることはなかったことに安堵しました。

途中はやや間延びした感がありましたが、
ラスト数ページは涙を流しました。
涙で文字を追うことができない……。
おそらくここ最近涙もろくなっていることも起因しているかと思います。
欲を言えば、もう少し文章にリズムがあれば……とも感じながら読みましたが
不満はまったくないです。

直木賞選評ではいろいろ問題があった作品ですが
そのものについては問題はなかったと思います。


※以下は結末に触れています。気になる方は反転させてください。

梶が再び骨髄移植のドナーとなることを願っているだけの状態であって、
作中では再び移植することなく終わっています。
服役中の受刑者がドナーのために移植手術をすることはいままでありません。
昔受刑者からの申告があったらしいのですが、却下されたようです。
そのこともあって、林真理子さんは猛烈に批判したのです。
ミステリー業界にまで批難。
そこまで言わなくてもいいじゃない……。
そこまで罵倒しちゃうと、すでに当時ベストセラーだった「半落ち」を読んで感動した読者も罵倒された気分。
会見を見ていた私はなんとなくそう思ったのを覚えています。

↑ココマデ。


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ラベル:横山秀夫 小説
posted by オハナ at 12:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ヤ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月18日

パレード    吉田修一


内容(「BOOK」データベースより)
都内の2LDKマンションに暮らは男女四人の若者達。
「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。
それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。

そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め…。
発売直後から各紙誌の絶賛を浴びた、第15回山本周五郎賞受賞作。


   **    **    **

核心に触れているため、注意してくださいm(__)m






「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」

共同生活をする男女4人。
もめ事も起こらず、居心地がいいとすら思える2LDKのマンション。
なぜ、共同生活を続けられるのか。
それは、インターネットのチャットのようなもの。
嫌なら出ていけばいい。いるなら、笑っているしかない。

私自身もどちらかというと、上辺でいいじゃん、と考えている。
今日はこんな気分だから、この子と居よう。
今日はそんな気分じゃないから、この子とはいたくない。
その人専用の「私」がいるのも事実で、それが当たり前。
本当の私はどれ?――ではなくて、それも「私」。
それを楽しむ自分もいる。


さて、この作品は、章ごとに語る人物視点が変わっていきます。
さらりとしたドライな関係が淡々と語られて何気ない日常の描写も細かい。
結末より、読み終わって全ての人物を通して、
それから自分を見つめると“憐れだな”“怖いな”と感じました。


これは自分かもしれないから、自分を取り巻く環境かもしれないから。
そう思うと自分が空恐ろしくなりました。
こういうことが、あるかもしれない。
私もそうなのかもしれない。
すべての「私」を知っている人はいないと思っていた私、
けど、本当はみんな知っているかもしれない……ということすらも思えてきます。
(……心当たりがある。友人が隠しているであろう事柄には敢えて触れず、笑顔で接するのはよくあること)


よくある光景よねぇ、気楽でいいじゃない、私もよくあるわぁ――
そこまで登場人物に共感しておいて、ラストに突き落とされる怖さ。
私も同じなの?この人たちと?
私も琴たちと同じように、
直輝がジョギングに行く時は迷惑な顔をするだけなのか、
ジョギングを止めないのか、
それはつまり、直輝がどのようになってもいいと思っているのか。
同じかもしれないね、と著者に言われた気分。
(考えすぎだろうか……)

日常を切り取ったドキュメンタリーのようなもの。

これは読んだ人によって読後の感想、着目する箇所は全く違ってくると思います。




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ラベル:小説 吉田修一
posted by オハナ at 18:25| Comment(0) | TrackBack(0) | ヤ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月07日

あかね空   山本一力



内容(「BOOK」データベースより)
希望を胸に身一つで上方から江戸へ下った豆腐職人の永吉。
己の技量一筋に生きる永吉を支えるおふみ。
やがて夫婦となった二人は、京と江戸との味覚の違いに悩みながらもやっと表通りに店を構える。
彼らを引き継いだ三人の子らの有為転変を、
親子二代にわたって描いた第126回直木賞受賞の傑作人情時代小説。


    **    **    **

上方から江戸へ単身でやってきた豆腐職人の永吉。
江戸と京の味の違いに苦戦し、ひたむきに豆腐と向き合う永吉を支えるおふみ。
江戸長屋町の人情に触れながら、一生懸命生活していく家族の悩み、絆、葛藤を描いた物語。

気軽に読んでいたら、どんどんのめり込んで、
泣いてしまいました。
リズム・テンポも良く1ページ目から、ぐいと読み手を引きこんできます。
気を抜くと涙がほろり。
ページを捲る手も止まりません。

構成も凝っていて、著者の優しさが垣間見えます。
第1部は、幸せにむかっていた家族が、
少しずつ哀しい音を立てながら歪んでいってしまう。
第2部では、その絡み合った家族の心境を丁寧に一つずつ紐解いていく。

うまく言葉に出せない、伝えたいことが伝わらない。
「夫婦といえども、同じことをかんがえているかどうかはわからない」
どこの身内にもある悩みに頭を抱えてしまう。
それでも、豆腐屋「京や」一家は支えあい、
最後には笑って生きていきます。

「家族力」が試された一家が円満になっていく様は
読んでいて気持ちがいいです。
そして、周りの人の人情に触れた瞬間、
胸が温かくなっていくのがわかります。

出来うることなら、
この作品は2冊くらいにしてほしかったです。
このままでもいいのでしょうが、私としては気になる人物も出てくるし
京の里のことも心残りです。
まぁ……つまりは、この人情溢れる江戸の人たちをもっと見ていたい、
ということですね。



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ラベル:山本一力 小説
posted by オハナ at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ヤ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月27日

利休にたずねよ    山本兼一



内容(「BOOK」データベースより)
おのれの美学だけで天下人・秀吉と対峙した男・千利休の鮮烈なる恋、そして死。
本書は、利休好みの水指を見て、そのふくよかさに驚き、侘び茶人という
一般的解釈に疑問を感じた著者が、利休の研ぎ澄まされた感性、色艶のある世界を
生み出した背景に何があったのかに迫った長編歴史小説である。

**  **  **  **  **  **


「槿花一日自為栄」
槿花は一日なるも自ら栄となす      白居易

槿の花は、一日しか咲かない。それでも素晴らしい栄華だと詠じている。

     

まず、私は1ページ目から、引きずり込まれました。

センテンスが短く、文章が読みやすいです。
それだけではなく、ぎりぎりまで文章を削り、推敲に推敲を重ねている感がします。

それでいて、艶があり美しく官能的でいて骨太――
ものすごく色香が漂う作品です。

一文、一文読み進めるごとに、情景、色、香り――浮かんできます。
それだけを感じるだけでも、十分価値がある物語。


そして、構成が非常に巧みで、時系列がさかのぼっていくかたちになっています。

利休の求める「美」、「美」への執念、利休の「恋」が静かに熱く語られています。


最後は妻の宗恩の視点ですが、すとんとおさまってくれました。
聡い女性です。
最後の行動には、利休への愛を感じました。



一度、ストーリーがわかれば、
再度読み直す時は、途中の章を選んでもいいかなと思います。
それぞれに、視点が違いますので十分堪能できそうです。




読了後、利休の発言の一文を読み返しました。
『わしが額ずくのは,美しいものだけだ』
この一言が一気に重いものへ変わったの言うまでもありません。

ラベル:山本兼一 小説
posted by オハナ at 02:11| Comment(0) | ヤ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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