2011年07月23日

ぬるい毒  本谷有希子


内容(「BOOK」データベースより)
ある夜とつぜん電話をかけてきた、同級生と称する男。
嘘つきで誠意のかけらもない男だと知りながら、私はその嘘に魅了され、彼に認められることだけを夢見る―。
私のすべては、23歳で決まる。そう信じる主人公が、やがて24歳を迎えるまでの、5年間の物語。


  **  **  **  **  **


まず、タイトルの語感がとても好きです。

主人公は恋愛の駆け引きをしようとも、どっぷり相手に浸かってゆく。
それも、それを甘んじて受けているようにも感じられます。
相手の嘘がもっと素晴らしかったらいいのに…と。
それはわかります。
もっともっと相手の吐く嘘が巧妙で物語が見られるのなら、
その波に呑みこまれてみたい、という思いはわかります。

でも、本谷さんの書く物語は、
「みんなこういうところあるかもしれないけれど、
ここまでの女じゃないでしょ?」
と言っているような気がします。
すべて共感できなくても構わない、と。
(あくまで私が作品を読んだ感想です)

それでも、私はこの作品が好きです。
ぬるい、といいつつ、どろりとして悪臭を放つような毒はクセになります。

やはり、劇作家さんということもあって
舞台映像が見えそうな作品でした。


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2011年06月30日

グッバイ艶   南川泰三


内容(「BOOK」データベースより)
一九六八年冬。童貞だった僕は、酒を飲ませればだれとでも寝る女という言葉を信じ、
艶との出会いを果たした。
奔放で危うい性格に戸惑いながらも、人一倍寂しがりやな彼女に惹かれていく。
だが二十五年後、過去の秘密を記した日記を遺し、艶は逝った…。自伝的小説の白眉。


**  **  **  **  **

艶(えん)は著者、南川泰三さんの奥様。
奥様とは聞こえがよい印象ですが、
本書のイメージそのままでいうと
酒を飲ませればだれとでも寝る女と言われ、奔放で酒による果てしない破滅願望のある女。

アルコール依存症気味の艶との生活は並みの精神では続かなかったように思われます。
それが25年も。
価値観も生き様も違う人間が文字通り裸と裸で繋がれて、
でもしかし、それだけではない深いところで引きあっていたのだろうかと感じます。

私からすると、南川さんも相当奔放のように思えます。
私が異性だからそう思うのでしょうか。
本能のままに、他の女性と交わったりするあたりは……。
そして、この艶と長く付き合うことができた、というあたりにも
並みの人間じゃないな、と感じました。

それでも、
私は艶に対して、全部とはいわないにしても共感できるところはありました。
艶はすべてが女性だったな、と思います。
最期の最期まで女でいたかった艶。
その箇所は涙が滲みました。

あと、最初に出てくる詩の意味は後半になって再度読むと
思わず鳥肌が立ってしまいました。
艶の腹の底からの想いが出ています。


「熱狂的に酔い、そして、生き、絶望にさえ酔いたかった」


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2011年03月04日

きみはポラリス  三浦しをん


内容(「BOOK」データベースより)
どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。
三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛…言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。
けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている―。
誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。
カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。


      **  **  **

11篇からなる恋にまつわる短編集。

軽く読めればいいかな、と思い購入したんですが
一気に読んでしまった。
薄くなりがちな短編集にもかかわらず、恋する生活をうまく切り取っています。

恋。というと甘くなりがちなのに、そうではありません。
悲しいや苦しいとも違う。
ドロドロも違う。
ひどく曖昧な表現だけど、渋みのある甘さなのかしら。
後からホッとするような味がちゃんと追いかけてくるような感じ。
(あぁ、なんともいただけない表現……)
とにかく読んでみると分かってくださると思うのですが。

中でも印象的だったのが
「裏切らないこと」
裏切らず、本気を貫く。
そして三浦しをんさんが自らお題づけたのは“禁忌”

「私たちがしたこと」
これはなんだか苦しかった。
彼の気持ちも彼女の気持ちも何とも言えなかった。
素敵な、不毛だ。

面白いことに、話の雰囲気や文体が微妙に違うのです。
ライトなものもあれば、あざといぐらいの王道もあり、
三浦しをん趣味(BL風味)もあれば、
なにやら向田邦子さんの匂いもあります。
これだけ詰まっていたら十分です。
お腹いっぱい堪能できました。

一番最初の「永遠に完成しない二通の手紙」を読んでいるときに、
もう一回くらい彼らが出てくれば“しをん”っぽいなと思っていたら、
最後に「永遠につづく手紙の最初の一文」というので締められていました。

思わず、ニヤリとしてしまいました。

文庫版にはそれぞれのテーマ「自分お題」がきちんと書かれてあります。
それを見ながら読むのも楽しいですし、
後で照らし合わせるのも面白いかもしれません。


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2011年02月07日

吉原十二月   松井今朝子



内容(「BOOK」データベースより)
容貌も気性もまるきり違うふたりの妓。
妓楼を二分する激しい嫉妬とつば競り合いの先に女の幸せはあるのか?欲望を喰らい、花魁となる。


     **   **   **

江戸中期の吉原の妓楼、
舞鶴屋庄右衛門が粋な喋りで回想の語りを始めます。
器量のいい2人を少女の禿から温かく見つめ、
飛びきりの花魁に育てた主人は2人を忘れらない。

舞鶴屋でお職を張り、どこかぼんやりと見える様だが
華があり、男を惑わす才覚を持っている小夜衣

同じく舞鶴屋のお職を張り
目鼻立ちがはっきりして上背が高く、
素直な物言いのさっぱりとした気性を持つ胡蝶


性格が全く違う2人のナンバーワン争いを高みから眺め、
時にはいかようにさんざ2人に振り回されたかを愉快に主人は語ります。
途中、読んでいてふと……
主人の主観が、どうも小夜衣に贔屓が入った語りのように感じました。
そんな贔屓語りから、
何でも器用にこなし、嫌味をさらりとかわす小夜衣よりも、
感情的に妬みを出す胡蝶を愛おしく思ってしまいました。

ですが、これは最後まで読んでみると
思わず「あ……なるほど」とにんまり。
無粋勝手な思い違いをした自分を少し恥じました。
主人の語りが一層粋に思えました。

妬み・嫉みだけではなく、
廓の人情も感じることができ読後は気持ちが良かったです。
中だるみもありましたが、終わりよければすべてよし、です。

廓言葉や、軽快な語り口も心地いい。
そして、女の戦いはどの時代も変わりませんね。

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2011年02月06日

細川ガラシャ夫人 上下巻  三浦綾子



内容(「BOOK」データベースより)
暴君信長のむごい仕打ちに耐えかね、ついに明智光秀は織田家に叛旗をひるがえした
。しかしその天下はあまりにも短く、玉子は逆臣の娘として苦難の日々を過ごすことになった。
父母一族は亡び、夫や子とも引き裂かれた玉子は、秀吉のキリシタン弾圧の中、洗礼を受けることを決意する…。
強者の論理が支配する時代に、命をかけて信念を貫いた細川ガラシャの生涯を描く感動の歴史ロマン。


    **   **   **

明智光秀の娘、お玉(珠)。16歳で細川忠興の正室に入る。
父・光秀の謀反、味土野にて幽閉生活、秀吉の死、光成らによる挙兵。
この動乱の中で生きてきた細川ガラシャ。

光秀と煕子との出会いから物語は始まります。
痘痕のある煕子を明智家に嫁がせてはなるまい、と両親は煕子の妹を差し出すが
光秀は拒否をする。
煕子と契りを交わすことになった。
――予がちぎるはこの世に唯一人、お煕にて御座候――
ここから始まる物語の序盤としては、ものすごく心を掴まれました。

凛として美しい玉は気高く、強く、そして聡明。
気高さは傲慢に見え、まさにこれがお姫様といった感じです。
しかしながら、
謀反者光秀の娘ということで玉が討たれることを恐れた忠興は、
玉を人里知れた味土野へ幽閉することにした。
二年にもわたる侘びしい生活で玉が変わり始めます。
キリストの教えを知ることになるのです。

心はおだやかになるも、世の中は動乱。
秀吉が死んだあとは、天下分け目の大戦さ。
徳川につくことになっている細川家、忠興は出陣前に言います。
そちを隠すこともならぬ、(石田に)人質にとられることもならぬ
つまりは、死んでくれ、と。
他大名の内室のように逃げたりせず、玉は夫の言うがまま死んでいきます。
玉は強い。
元の気高さもさることながら、信仰の力がそうさせるのでしょう。
玉の生涯が繊細に書かかれています。

この本のおもしろさは、玉を取り囲む人々の描写です。
父母、夫、侍女、細川家人ら留守居たち。
この人たちの忠心ぶりに涙しました。
明智家時から玉を想っている初之助には特に心打たれました。
最後まで、玉の事だけを想っていた初之助。
初之助が切ないです。


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