2011年04月04日

君は永遠にそいつらより若い  津村記久子


内容(「BOOK」データベースより)
身長175センチ、22歳、処女。
いや、「女の童貞」と呼んでほしい―
就職が決まった大学四年生のだるい日常の底に潜む、うっすらとした、だが、すぐそこにある悪意。

そしてかすかな希望…?第21回太宰治賞受賞作。


   **  **  **

タイトルに惹かれずっと読んでみたく思っていました。

物語のほとんどはホリガイという女性の周辺を書いたもの。
就職が決まった大学4年、22歳処女。
これだけ聞くと、モテナイ女の心情がだらだらと書かれているのか?
と思いがちですが、そうではありません。

処女、という言葉がいやで、“女の童貞”と自分をカテゴライズするような女性。
大きな存在には抗うことなく、そつなく生きていることを良しとする性分です。
そして、自分のことをこうともいっている。
『アプリケーションをたちあげすぎたOSのように、処理能力が低く、のろまで結局一つのことも満足できない』

津村さんのこういった比喩表現がたくさん散りばめられています。
読んでいてそれが心地よくて、
気持ちよくて、
でも心を鋭く切っていくような感じがします。

そして、
ホリガイの周辺を取り巻く人物は、
リストカット、自殺、レイプ、虐待、誘拐……
と他にも様々な問題を抱えています。
シリアスな内容だけど、ホリガイを通して語られますので
そんなに重くはありません。
しかし、無関心で通り過ごすことはできないのです。

何かがおかしいぞ、と立ち止まる。

ホリガイは成り行きで入った居酒屋で隣に座ったおっちゃんと自分を重ね合わせます。
『他人にふれまわるほどではないが自分なりに充足していて、けれどその充足は孤独と同居している』
そして、終盤では
『わたしは、自分に会いたいと思う人などこの世にいないだろうと思いながら生きてきたし、今もそうだ』
と言っています。

それでも自分の性格を変えるつもりはない。
だけど、ラストでそれでもほんの少しの光が見えるのなら動くことに決めたホリガイ。

ホリガイの思う言葉に強く頷いて、
でもそんな自分は“嫌だな、淋しいな”って思いながら読んでいましたが
最後まで読んで、私もホリガイのように光を求めることができるかもしれない、と思えてよかったです。
それがなければ、ちょっと苦しい思いにかられたかもしれません。


ホリガイの言葉はたびたび私の心を鋭くついてきました。
最後まで読んでタイトルの意味を知ってほしいです。



津村さん、二回目なのです。
『ポトスライムの舟』以来です。
その時の感想は……うーんっていう感じだったのですが、
作者本人のことは気になっていました。
よかった。よかったです。
ポトスライムの舟より、私はこっちが好きかな。



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2011年02月12日

青空チェリー  豊島ミホ



内容(「MARC」データベースより)
うちの予備校の隣にラブホが建った。
以来あたしは屋上からのぞきちゃんな日々。ゆるしてちょうだい、だってあたし18さい。
発情期なんでございます…。
女による女のためのR-18文学賞大賞読者賞受賞作。


    **    **    **

前の「ハーモニー」がずしんと心と脳みそにきたので、
軽い感じを読んでみようと、
山になった積読本から「青空チェリー」を引き抜きました。

なめてかかったんでしょうね。
そんなつもりはなかったのですが、やはりデビュー作だしという気持ちもあったのでしょう。
想像以上によかったです。

大人になると、自分の気持ち・感情にある程度「抑え」というものを覚えてしまっています。
そう、おケツの青い時期のように、毎日心をふるふるさせている暇はありません。
ですがこの作品を読んでいるうちに、
自分がいかに鈍磨されていったかを気付かされてしまいました。

青春なんだけれども、甘酸っぱい、というのとは違う。
嬉しい、悲しい、むなしい、楽しい、つまんない、苦しい……
同じ感情はもちろん大人もある。
でも感情のカテゴリーが同じだけで、青春のそれとは違う種類のもの。
それらをぶわっと思い出せてくれます。


三篇からなる短編集。
「ハニィ、空が灼けているよ」
現代に戦争が起こるという設定で、
“彼”である教授と帰省した田舎の“ダーリン”とのできごと。

「青空チェリー」
R-18文学賞で読者賞を受賞したデビュー作

「誓いじゃないけど僕は思った」
中学のわずかな時を過ごした女の子を忘れられず、
その時の記憶と一瞬に執着する大学生の僕。

「ハニィ〜」では著者のふうわりとした文体が
戦争というものを軽くしているが悪くないです。
短編でありながら、人物の描写、感じたもの、大切なもの、目に焼き付けたものが浮かびました。

一番好きなのは「誓いじゃないけど僕は思った」です。
病的に未練たらたらな男の話じゃないか、と思ってしまったらいけません。
彼の中にある記憶は誰にも文句は言うことはできないし、憐れむ必要もない。
それは最後の一文で十分だと感じました。


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2011年02月08日

秋の牢獄   恒川光太郎



内容(「BOOK」データベースより)
十一月七日、水曜日。女子大生の藍は、秋のその一日を何度も繰り返している。
毎日同じ講義、毎日同じ会話をする友人。
朝になればすべてがリセットされ、再び十一月七日が始まる。彼女は何のために十一月七日を繰り返しているのか。
この繰り返しの日々に終わりは訪れるのだろうか―。
まるで童話のようなモチーフと、透明感あふれる文体。
心地良さに導かれて読み進んでいくにつれて、思いもかけない物語の激流に巻き込まれる―。
数千ページを費やした書物にも引けを取らない、物語る力の凄まじさ。
圧倒的な多幸感と究極の絶望とを同時に描き出す、新鋭・恒川光太郎の珠玉の作品集。


     **    **    **

上手い!!!
素直に思いました。
3篇からなる短編集です。
短編にも関わらず、幻想的な世界観を表現するのはお見事です。
ホラー要素はあるけれども、静かで美しい世界観は引き込まれます。


「秋の牢獄」
11月7日を繰り返す女子大生の藍。
朝になれば、すべてがリセットされて再び、何度も11月7日を迎える。
「神家没落」
古い家屋に入り込んだら、そこから出られなくなった青年。
その家屋が日本中を移動していることを知る。
「幻は夜に成長する」
祖母だと思っていた人は自分を誘拐した他人であった。
その祖母から譲り受けた力がある。
その力は幻を作ることも見せることもできる少女で…。

簡単に書けばこのようになるのですが、細かくは書けません。
詳しく書いてしまえば、著者の書いた幻想的な絵が醜くなる気がしまして……。(という逃げですが)

先の2篇は、通常の世界から別世界へ閉じ込められてしまう。
不安や恐怖がぐるぐると迫ってくるが、
それでも時間は進み、朝日はきっかり昇ってきて再び1日が始まる。
そんな日々を過ごしていたら、やがて鈍磨してきて当初の不安はなくなってくる。
閉じ込められた世界から、現世に戻るとき何を感じるのか。


「秋の牢獄」では、繰り返される今日が過ごしやすい1日でよかったと言っている。
誰かの葬式や、雨風の暴風雨でなくてよかったと……。

諦念とも思われる言葉に、解説では「死」を間近にした思いと同じではないかと書いてある。
短編最後の文末には、
「いろいろあったが、悪い一日ではなかった」
と書かれてあった。

う〜む……。
思わず唸ってしまいました。
この世界観は癖になりそうです。


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posted by オハナ at 18:29| Comment(0) | TrackBack(0) | タ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月07日

誕生日の子どもたち  T・カポーティ 村上春樹訳

誕生日の子どもたち   
           T・カポーティ
           村上春樹訳

内容(「MARC」データベースより)
少年や少女の無垢さ=イノセンスをテーマにして描かれた物語を収録。純粋で強く美しく、きわめて脆く傷つきやすく、また毒を含んで残酷なカポーティの6編の短編小説を、村上春樹が訳出。

  **  **  **  **  

今ノーベル賞候補者として話題の村上春樹訳の短編集です。
(個人的には、ノーベル賞は早いと思いますがね)
村上春樹さんの翻訳ものは、初めて読みました。
やはり、翻訳家というよりも小説家ですので、文章が巧みですね。
言葉を飾った感じがなく、分かり易く、リズムもいい。


誰の翻訳がいいというのではなくて、時代もあると思うんですがね。
どうも、初期のものなどは、古くさくて、
イマイチ入り込めないっていうのがありますからね。
そればかりは、しょうがないですよね。

村上春樹さんの他の翻訳ものも、読んでみたいと思いました。

さて、やはりカポーティの作品は、文句なく素晴らしいです。
私は好きです。
カポーティの無垢で純粋、そして儚さ、脆さが、
読んでいるうちにじわじわと迫ってきますね。


「こんなにつらくなるのに、なんで読んでしまうんだろう」と、読むたびに思います。

後をひく辛さがあると分かっているんですが、
何度も読んでしまいます。傑作。

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カポーティの伝記映画「カポーティ」がありますが、
これもまた、忘れられませんね。

カポーティ コレクターズ・エディション [DVD]

カポーティ コレクターズ・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • メディア: DVD



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2009年04月06日

ポトスライムの舟    津村記久子



契約女子社員のナガセの目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行、総額163万円。
お金がなくても、夢は毎日育ててゆける。
芥川賞受賞作。


 ** ** ** ** ** ** **  

まんま大阪が舞台です。
地理も言葉も生きていました。
テレビでよく聞くような関西弁ではなく、生きた大阪弁を使っていて気持ちが良かったです。

しかし……、これは日記なのか??
帯の書評として、「蟹工船よりこっちでしょ」と書かれていました。
いや……違うでしょう。

共感しやすい材料のはずなのに、なかなか共感できませんでした。
残念。

私は、読書家さんたちほど小説を読んでいないので、
詳しく語ることはできません。
純文学、大衆小説に関しても論議・考察をすることはできません。
しかし、純文学といわれるものを読んだときって、
ズドーンと衝撃がくるのです。
この一文に痺れる、抉られるような感覚、何年たっても忘れられない語感。
……それなのに、響かなかったです。
哀しい。
私自身にも何か原因があるような気がします。

津村さん自身には少し興味がでました。




他作に期待したいです!!!!!!
posted by オハナ at 21:11| Comment(0) | タ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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