2011年03月31日

その日のまえに   重松清


内容(「BOOK」データベースより)
僕たちは「その日」に向かって生きてきた―。
昨日までの、そして、明日からも続くはずの毎日を不意に断ち切る家族の死。
消えゆく命を前にして、いったい何ができるのだろうか…。
死にゆく妻を静かに見送る父と子らを中心に、それぞれのなかにある生と死、そして日常のなかにある幸せの意味を見つめる連作短編集。


   **   **   **

薦められるがままに、何の前情報もなく読みました。

あかん!……泣いてたまるか!って思いながら読み進めるも、涙がじわじわと溢れてきました。
普段なら泣かなかったかもしれない、
もしかしたら、少し鼻白んだかもしれない、
テーマ自体があざといよー、なんて思うかもしれない。
でも、やっぱり最近は私の涙腺が崩壊しっぱなしなので
そんな言い訳も通用しないのです。


生と死を書いた作品で、
生きること、死ぬこと、のこされること、歩き出すこと
の短編集です。
少しずつリンクされているので連作短編集となっています。

ひこうき雲
どっちかというと嫌われている部類に入るクラスメイトが重い病気になった。
死というものがいまいちピンとこなかったあの頃。

朝日のあたる家
夫を突然亡くした女性のその10年後のお話。
『昨日までいた人が、今日、不意にいなくなる。
そのひとがいようがいまいが、明日は来るの。
だってしょうがないじゃない、そういうものなの、人生ってものは』

私はこの女性の生き方が好きですね。
というよりも女性が強いのかもしれません。
しかも、この女性は娘もいる、
仕事も持っている。
強くならなきゃいけませんものね。

潮騒
末期がんを告知された中年男性のお話。

ヒア・カムズ・ザ・サン
母ひとり子ひとり。
母親が癌になってしまった。
一番涙腺を刺激した作品ですね。
息子目線で語る母親への思いは、口は汚いんだけれども
じわじわと私の喉を熱くさせます。

その日のまえに
その日
その日あとで

三連作。
妻が死んでいってしまう日を“その日”と夫婦は呼ぶことに決めた。
貧乏時代を経て、ようやく経済的余裕を持ち、
息子ふたりと一緒に生活していた矢先……。


一篇を読み終えるたびに、悲しみの思いではなく
どちらかというとしみじみした思いを馳せました。

癌などの治療というのは想像以上です。
見ている側も大変です。

集中治療室などに足を踏み入れると、
患者の姿に絶句して体が動きません。
元気だった人がこんなになるのか――
というぐらいの痩せかただし、
たくさんのチューブがつながって
不謹慎ながらも
「このチューブ、痛いのかな」
なんて場違いな事を考えたりして。
でもなんて言葉をかけたらいいのかわからないし。
なんだこの匂い、と思ったら、
体臭が変化していたり……。
元気だった人が目の前で死に一直線なのです。

と、死はこの本のように綺麗じゃないのですが
でも私はこの本に憧れました。
素直に「いいなぁ」と。


悲しいけれど、「いいなぁ」なのです。




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posted by オハナ at 18:46| Comment(4) | TrackBack(0) | サ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月22日

疾走 上下巻  重松清



内容(「BOOK」データベースより)
誰か一緒に生きてください―。
犯罪者の弟としてクラスで孤立を深め、やがて一家離散の憂き目に遭ったシュウジは、故郷を出て、ひとり東京へ向かうことを決意。
途中に立ち寄った大阪で地獄のようなときを過ごす。
孤独、祈り、暴力、セックス、聖書、殺人―。
人とつながりたい…。
ただそれだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた少年の軌跡。
比類なき感動のクライマックスが待ち受ける、現代の黙示録、ついに完結。


    **  **  **

「重い。重い」と以前聞いてから気になっていた本。

装丁からして気になります。
もがき、苦しみ、喘いでいるような顔。

読んでいくにつれて、主人公シュウジの顔が装丁の顔と重なります。
もがいて、苦しんで、喘いで、求めている。
それが中学生の少年に覆いかぶさった運命。

「重松さん、なんて運命を背負わせるんですか!」
と思いながら読みました。


秀才と呼ばれていた兄の精神は壊れ、ある日兄は放火魔として捕まった。
田舎で起こった事件は瞬く間に噂は広まる。
“赤犬を出した家族”と蔑まれ村八分になってしまう。
父の仕事はなくなり、母は現実を受け止めることができず、
シュウジはいじめられる日々を送る。

それでも強い「ひとり」になりたいと思いシュウジは毎日を淡々と過ごす。
仲間が欲しいのに誰もいない「ひとり」が孤立、
ひとりでいるのが寂しい「ひとり」が孤独、
仲間を欲しいと思わない誇りある「ひとり」が孤高

孤高でありたいと思いながら過ごす。

果てのない崩壊。
父は家を出て、母は家にろくに帰らなくなり大きな借金を作ってしまった。
田舎を出ようと思い雪が降った日に家を出た。
止めるものは誰もいない。

ここからさらに彼が歩む道は険しくなります。
兄が犯した罪を中学生のシュウジが全部背負ってしまったかのような道。
父と母は早々とその荷物を背負わずにどこかへいってしまったのに、シュウジは抗うことなく背負ってしまった。


シュウジはひとりではなく誰かと繋がっていたかった。
ひとつになりたかった。
最期にやっと彼はみつけることができた、そう思いたいラストでした。
――誰か一緒に生きてください――
彼の声に答えた人がいた。


彼が何度も読む旧約聖書の一部。
“ヨブ記第10章”

なにゆえあなたはわたしを胎から出されたか、
わたしは生き絶えて目に見られることなく、
胎から墓に運ばれて、
初めからなかったようであったなら、
よかったのに



壮絶な出来事が降りかかってくるのに、
シュウジはブレない。
それは強さとは違うのですが、芯があるというか、
彼の中で譲れないものが確かにあったと思うのです。
いくら罪を犯そうとも、間接的には大切なものを守ることにもなります。
それが重松さんらしい、かなとも感じました。


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posted by オハナ at 22:55| Comment(4) | TrackBack(0) | サ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月18日

フォー・ディア・ライフ   柴田よしき



出版社/著者からの内容紹介
眠らない街・新宿――。眠れない探偵は走る。
元マル暴、現私立探偵兼保育園園長。タフで優しい極上探偵物語。

新宿2丁目で無許可だが最高にあったかい保育園を営む男・花咲慎一郎、通称ハナちゃん。
慢性的に資金不足な園のため金になるヤバイ仕事も引き受ける探偵業も兼ねている。
ガキを助け、家出娘を探すうちに巻きこまれた事件の真相は、あまりにも切なかった……。
稀代のストーリーテラーが描く極上の探偵物語。


      **  **  **

読書メーターの読友さんが絶賛されて、めちゃくちゃ気になっていたので手を伸ばしました。

柴田よしきさんはアンソロジーの一篇でしか読んだことはなく、
その中では私好みだったのです。

読み始めて驚きました。
印象がまったく違いますね。
これも「すごくイイ!」

そもそもハードボイルドものが好きなので私は興奮しながら読了。
ハードボイルドでも、ソフトなタッチで描かれていて読みやすいのです。
どっぷりハードだとノワール色が強いのですが、
これはそれほどノワール色がなくて安心します。


キャラクターが多いので、どの人に傾倒するか分かれるのも楽しいのではないのでしょうか。
主人公ハナちゃん、ハードボイルド主人公よろしくのグレー感も好きなのですが、
私は探偵事務所の城島が気になります。


作中通してめまぐるしく次々に事件が起こり、
走りっぱなしの主人公と読み手は一緒に体感していきます。
ハラハラして、本を置く隙を与えてくれません。
もたもたしていたら、ハナちゃんに置いてかれそうな気持ちになりました。


for dear life
「一生懸命・命からがら」の意。


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posted by オハナ at 16:14| Comment(2) | TrackBack(0) | サ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月13日

ハサミ男     殊能 将之



内容(「BOOK」データベースより)
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。三番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作。

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未読の方は、ここから下を読まないでください






本を買うとき人によっては、本の裏や書評、レビューまでチェックして買われる方もいるでしょう。
私は極力あらすじをチェックしないようにしています。
極端に言うと裏書きも読まないことがあります。

ただ、これは非常に難しい。
書店の手書きPOPにたまに書かれてあるんですよね。
せめて、ミステリは書かないでほしい、と思う人はいるのではないのか?
「みごとな叙述トリック!!」
なんて書かれて読みはじめると、ミスリードされてたまるか!!って思いながら読む羽目になって結局楽しめないんです。
そもそも、どんでん返し目的だとショックですよね。
ラスト云々までのストーリーが面白ければ一番いいんですが。


ミステリにハマりたての10代は、叙述トリックものが大好きで、
今はあまり読まなくなりました。
だからこそ、今回久しぶりだったので新鮮でした☆

後半にトリックが分かるのですが、それと同時にどこでミスリードされたかもうっすらわかりました。
欲を言えば、それすらもわからなくて、すぐさま読み返したくなるようだったらな・・・・・・・・と感じました。(もうワガママですね)

でもでも、十分楽しめました。
キャラも小道具も、効いていました☆
posted by オハナ at 00:08| Comment(0) | サ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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