2011年03月11日

柔らかな頬 上下  桐野夏生


出版社/著者からの内容紹介
私は子供を捨ててもいいと思ったことがある。
5歳の娘が失踪した。夫も愛人も私を救えない。
絶望すら求める地獄をどう生き抜くか。

「現代の神隠し」と言われた謎の別荘地幼児失踪事件。
姦通。誰にも言えない罪が初めにあった。
娘の失踪は母親への罰なのか。4年後、ガン宣告を受けた元刑事が再捜査を申し出る。
34歳、余命半年。
死ぬまでに、男の想像力は真実に到達できるか。

     **  **  **

娘がいなくなった。
捜査も行き詰った。ふと眼を離した隙に忽然と姿を消した5歳の娘。
一見ミステリーかと思われるストーリーですが、
まったく違うものとなっています。

人間の欲望、救い、死、赦しをこれでもかと見せつけるように書かれている。

重厚な文章、語彙、読み手を震わせる言い回しには圧倒的なパワーがあり、
私を引きずり、離してくれない。

読み手を安心も納得もさせない結末。
これが人間なのだ、と誤魔化すことなく桐野さんは突き付けてくる。
人によっては不満が残る作品かもしれません。
私は下手な“納得”はいらない。
犯人は○○でした。
動機は○○でした。
となっていたら、多分幻滅していたかもしれない。

現実に起こる事象は、人間が簡単に納得できるものはないと思う。
神隠しかと思われるような失踪事件は解決できないまま今に至るものも多い。
残された家族は何を想い今を生きているのだろう。
それは当人しか知り得ない。

当人になり代わることができない以上、誰もが持てる共感など、ただ相手を苛立たせるだけだ

同情の仮面をかぶった好奇心。


桐野さんの本を読むときはたとえ帯に“ミステリー”と書いてあっても鵜呑みにすることなかれ。
人間の、特に女性の醜くどす黒い部分を見せるのは本当にうまい。
男性はどのように感じるのだろう。
主人公に嫌悪するものの、かといって駄作とは思わない桐野作品は稀有だと思う。


私はそれを覗くのが好きでたまらない。


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2011年02月17日

姑獲鳥の夏   京極夏彦


内容(「BOOK」データベースより)
この世には不思議なことなど何もないのだよ―
古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第一弾。
東京・雑司ケ谷の医院に奇怪な噂が流れる。
娘は二十箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。


    **    **    **

ひさしぶりの再読。
学生の時に600pも超える本を読んだ達成感と
京極堂に魅了されたことは今も忘れられません。
(と言っても、シリーズ読破しておりませぬ)

こんな世界があるのか……と読了後、ほぅ、と恍惚感にどっぷり浸りました。
当時は最初に延々と語られる蘊蓄には「えぇ、長いよ〜」
と思いましたが、興味深い。

この世には不思議な事など何もないのだよ。

京極堂のこの一言には、すとんと自分自身に収まりました。
そうか、不思議なものはないんだね。そうかそうか。


今改めて読んでも面白い。
読んでいて何が一番興奮するかというと、
京極堂が憑き物落としへ向かう時。
カッコイイ。(嘆息)
探偵・榎木津の変人ぷりも好きなのです。

密室状態で消えた夫、妻は20ヵ月を超えても妊娠し続ける、
赤子は次々と消えていく……。

不思議なことだらけですが、
ミステリーという概念を取り去って、取りあえず独特な世界観を味わう事をオススメします。


小畑健が装丁を書いた分冊も気になるね。



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2011年02月01日

グロテスク   桐野夏生



【本書の内容】
世にも美しい妹ユリコを持つ「わたし」は、
ユリコと離れたい一心でQ女子高を受験して合格し、
スイスに住む両親と離れて祖父とふたり暮らしを始める。
エスカレーター式の名門Q女子高は厳然とした階級社会であった。
佐藤和恵という同級生が美人しか入れないという噂のチアガール部に入ろうとして果たせず、
苛立つのを、「わたし」は冷やかに見守る。
夏休み前に母が自殺したという国際電話が入る。
ユリコが帰国するというので、「わたし」は愕然とする。
同じQ女子高の中等部に編入したユリコは、その美貌でたちまち評判になるが
、生物教師の息子木島と組んで学内で売春し、それがばれて退学になる。
和恵はQ大学から大手のG建設に就職した。―そして二十年後、ユリコと和恵は渋谷の最下層の街娼として殺される。


    **       **

東電OL殺人事件をベースにして書かれた。
とありますが、それとは別として読むのを薦めます。
当時、マスコミは「昼はエリートOL、夜は娼婦」というキャッチで騒ぎましたが、
そんなに珍しいことではありません。
少なくないです。      


出版社/著者からの内容紹介
「私ね、この世の差別のすべてを書いてやろうと思ったんですね。
些細な、差別と思っていないような差別。
お金も美醜も、家柄も地域も、勉強できるできないも、
全部の小さな差別をいれていこうと思ったんですよ。
エリートになればなるほど、たぶんものすごい差別が
いろいろたくさんあると思うんです。
競争が激しい。
それが女の子の場合、もっと複雑になるというのかな。
厳しいんじゃないかと思うんですよ、女の子は。」
(「本の話」7月号 『グロテスク』著者インタビューより)


この小説は、桐野さんも仰るように、上記にあると思います。

ほんとうに、桐野さんはこれほどの悪意をよく書けたものだ。
物凄いエネルギーが必要だったでしょう。
登場人物のだれにも共感が出来ないです。
語り手の「わたし」に同調しようとしても無理です。
なぜなら、語り手の信用性も皆無ですから。

女性は学校、会社、主婦仲間等々で小さいながらも女性世界があると思います。
自分の位置、相手の位置、優か劣か、幸か不幸か――
お互いにどんなに仲良く過ごしていても、
当人が意識していなくても比べています。
相手を蔑むのか、自分を卑下するのかは人にもよるでしょう。

女性は敏感です。
会話の端々からこぼれるちょっとした悪意。
蔑むような視線。
ほんの少しの仕草からそれらを察知します。
男性からすると「考えすぎだろう」と思われるかもしれませんね。
私はこういった女社会に辟易します。
女だらけの世界で働いていたときにもうんざりしました。

誰かに見られていないと、存在しないも同じ。
これは男女問わずかもしれませんが、女性の方が強くあるかもしれません。

うんざりするような悪意に満ちた小説ですが、
自分にも同じようなものを持っている気がする――
それを思いながら、この小説を読み進めるのは苦しかった。
けど、目を背けることはできない。
そして、このような女たちを知っているような気がします……。


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2010年11月12日

死ねばいいのに   京極夏彦


内容(「BOOK」データベースより)
死んだ女のことを教えてくれないか―。
無礼な男が突然現われ、私に尋ねる。
私は一体、彼女の何を知っていたというのだろう。
問いかけられた言葉に、暴かれる嘘、晒け出される業、浮かび上がる剥き出しの真実…。
人は何のために生きるのか。
この世に不思議なことなど何もない。
ただ一つあるとすれば、それは―。
       
     **        **

若い健也という男が、死んだアサミを知るために、
生前の彼女の関係者に尋ねてくる。

その若い男は、20代でロクに職にも就いてない、
礼儀もなっていない、鈍感なやつ。

アサミの上司、アサミの隣人、
アサミの彼氏、アサミの母親、担当刑事…

みんな結局アサミのことよりも、自分のことばかり話す。
私は頑張っているんだ。
私だって我慢してきたんだ。
評価してくれない。
優しくしてくれない。
嫌われている、
蔑まされている。
勝ちたい。

上司、隣人、彼氏、母親、刑事の話を聞いていると、
ハッとさせられることもあります。
少なからず、一瞬でも自分自身も思ったことはある感情。

いろんな理由をつけて行動しないのは、
大人の特徴なのかもしれません。
それに対して、社会的不適合(?)プーな健也に言われます。

厭なら辞めりゃいいじゃん。
辞めたくねーなら変えりゃいいじゃん。
変わらねーなら妥協しろよ。
妥協したくねーなら戦えよ。
何だって出来るじゃん。何もしたくねーなら引き籠もってたっていいじゃん。


なんて分かりやすい言葉でしょう。
確かに、私も学生のころは
大人を見て同じこと思っていたような気がします。

「引き籠もりにもなれねーヘタレってことじゃんか」

思わず、登場人物と同じく
そーだよね。
って思ってしまいました。


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2010年11月05日

乳と卵     川上未映子



内容(「BOOK」データベースより)
娘の緑子を連れて大阪から上京してきた姉でホステスの巻子。
巻子は豊胸手術を受けることに取り憑かれている。
緑子は言葉を発することを拒否し、ノートに言葉を書き連ねる。
夏の三日間に展開される哀切なドラマは、身体と言葉の狂おしい交錯としての表現を極める。
日本文学の風景を一夜にして変えてしまった、芥川賞受賞作。

            **        **

自分が小学生のころを思い出しました。

自分の気持ちとは反対に、体は女性へと変化していく。
嫌悪感。
あぁ、気持ちが悪い。

大人たちや、保健の教科書は、
それがいかに素晴らしいことかを押しつけてくる。

血が出るのが怖いのではなくて、
ただ、オンナになっていく様に吐き気がありました。

初潮を迎えたって、
親には言うもんか――!!!!


と、私自身は強く思ってたので、
緑子の心中は共感できました。

豊胸手術を受けに上京してきた40目前の妹・巻子
巻子の娘で、誰とも筆談でしか会話をしない緑子
ただ二人を傍観する巻子の妹・わたし


今はまだ、“巻子とわたし”の気持ちはわかりません。
でも、それぞれの抱えている葛藤などが、
子を産んだり、年齢を重ねることで
共感ができるかもしれません。



独特な文体ですが、慣れれば読みやすいです。
改行もなく、センテンスも長くって、
大阪弁なので、ちょっとばかりしんどい人はいるかも。
(大阪在住の私でも慣れるのに、数ページ要しました)

「乳と卵」に関しては、
川上未映子さんの感性は好きです。
ただ、めんどくさいなぁって思わせる文章。
それが逆に、
登場人物たちの心の葛藤、悩みとなって
表現されているかのように感じました。


ただ、男性にはどう感じられるのか。
ちょっと男性の意見も聞いてみたい気がします。



併録で受賞作後の「あなたたちの恋愛は瀕死」
私の読解力がないのでしょう。
残念。
狙いすぎているのか、
その狙いが私にはわからないです。


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posted by オハナ at 20:25| Comment(2) | TrackBack(1) | カ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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