2011年07月23日

ぬるい毒  本谷有希子


内容(「BOOK」データベースより)
ある夜とつぜん電話をかけてきた、同級生と称する男。
嘘つきで誠意のかけらもない男だと知りながら、私はその嘘に魅了され、彼に認められることだけを夢見る―。
私のすべては、23歳で決まる。そう信じる主人公が、やがて24歳を迎えるまでの、5年間の物語。


  **  **  **  **  **


まず、タイトルの語感がとても好きです。

主人公は恋愛の駆け引きをしようとも、どっぷり相手に浸かってゆく。
それも、それを甘んじて受けているようにも感じられます。
相手の嘘がもっと素晴らしかったらいいのに…と。
それはわかります。
もっともっと相手の吐く嘘が巧妙で物語が見られるのなら、
その波に呑みこまれてみたい、という思いはわかります。

でも、本谷さんの書く物語は、
「みんなこういうところあるかもしれないけれど、
ここまでの女じゃないでしょ?」
と言っているような気がします。
すべて共感できなくても構わない、と。
(あくまで私が作品を読んだ感想です)

それでも、私はこの作品が好きです。
ぬるい、といいつつ、どろりとして悪臭を放つような毒はクセになります。

やはり、劇作家さんということもあって
舞台映像が見えそうな作品でした。


posted by オハナ at 11:16| Comment(0) | TrackBack(0) | マ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年07月12日

廃疾かかえて  西村賢太


内容(「BOOK」データベースより)
怪し気な女ともだちに多額の金を貸していた同棲相手の秋恵。
その人の好さに暴力的な衝動をつのらせていく、身勝手な男・北町貫多を描く表題作。
大正期の無頼派作家・藤澤清造の歿後弟子を任ずる金欠の貫多が稀覯雑誌を求め、同行を渋る女と地方へ買い出しに行く「瘡瘢旅行」他、敗残意識と狂的な自己愛に翻弄される男の歪んだ殉情を描く、全く新しい私小説。


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身勝手な男、貫多。
好きで同棲している秋恵に罵倒して、便所のスリッパで何度もはたき、
肋を蹴る。まさに自分勝手で最低なDVな男。
もっと言うなら、下衆な野郎。

こういう男性が作品に出てくる場合はたいてい、気分は良くなく眉間にしわを寄せながら読むんですが、意外にもこの作品はそういったことはありませんでした。
おそらく、下衆な野郎を表現している文章が綺麗なのです。

下衆な貫多の言い分は実に勝手。
ああ言えばこう言う性格で、秋恵(女性)に対しても下品な言葉を浴びせます。
女性が読めば、こんな男とは絶対関わりたくない!!!と思うことは必至。
なのに、なぜかどんどんと読んでしまう。
怖いものみたさ……とはまた違う。
解説になるほどと思う答えが書かれていました。

「我々が(中略)幼児の頃からさんざ言われてきた教えを、貫多は気持ちよく無視します。貫多は私たちの変わりに暴力をふるい、性的欲求を開放し、カロリーの過剰摂取をしてるのではないかと思えてきて、だからこそ私は、負のヒーロー・貫多に対して一抹の痛快感を覚える」


まさにそうかもしれません。
間接的に自分のやってみたいことをやり散らかしてくれる負のヒーロー、貫多。

ただし、こういう人間は小説の中にだけ住んでいて欲しいと願うのみ。



posted by オハナ at 07:38| Comment(0) | TrackBack(0) | ナ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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