2011年01月27日

神のふたつの貌   貫井徳郎


内容(「BOOK」データベースより)
―神の声が聞きたい。
牧師の息子に生まれ、一途に神の存在を求める少年・早乙女。
彼が歩む神へと到る道は、同時におのれの手を血に染める殺人者への道だった。
三幕の殺人劇の結末で明かされる驚愕の真相とは?
巧緻な仕掛けを駆使し、“神の沈黙”という壮大なテーマに挑んだ、21世紀の「罪と罰」。


    **      **      **

ミステリーとなっていますが、
本筋にはそれほど重要じゃないと思われます。
読み始めて第一章で、
「ああ、これはこう思わせたいんだな」
と思いました。
が、だからといって、
すべてがわかったわけではありません。
第二章で、ほんの少しの違和感を覚え、
第三章で、ふんふん。となったわけではありますが。
それは貫井さんの筆力なのでしょう。
ぐいぐいと読ませてくれます。


しかしながら、感想を書くとなると難しいです。
神の存在を求める少年。
神――と言われてもいまいちピンとこない。
ただ、
信仰することに意味があるとは思っています。
信じるものは救われる――なんていいますが……。

ピンとこないといっても、面白くなかったわけではありません。
一気に読んでしまったのは事実で、
郁代の描写はリアリティがありました。


大どんでん返しの“ミステリー”求めるならば
他の作品をお薦めしますよっと。


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2011年01月11日

あ・うん   向田邦子


内容(「BOOK」データベースより)
つましい月給暮らしの水田仙吉と
軍需景気で羽振りのいい中小企業の社長門倉修造との間の友情は、
まるで神社の鳥居に並んだ一対の狛犬あ、うんのように親密なものであった。
太平洋戦争をひかえた世相を背景に
男の熱い友情と親友の妻への密かな思慕が織りなす市井の家族の情景を鮮やかに描いた著者唯一の長篇小説。


        **      **      **

太平洋戦争をひかえた世相を背景にしています。
その時代のいたって普通の家族と、友情、口に出せない思慕を描いた作品です。

向田邦子さんは、一般家庭のとりとめのない会話や描写を
繊細に、且つそれをさらりと表現される方です。
大げさな言い回しや描写はないのに、印象に残る。
すんなりと画が浮かぶのです。

つましい月給暮らしの水田仙吉と
軍需景気で羽振りのいい中小企業社長の門倉修造の友情物語。

水田夫人のたみと19歳になる娘のさと子も門倉に世話になっていた。
仙吉と門倉は20年以上の付き合いがあり、
さと子にとっては血の繋がりこそないが、身内同様と思っている。

仙吉、門倉、たみの三人を娘のさと子は理解することができない。
どうみても、門倉はたみに心を寄せ、
母のたみも門倉に対してよく思っているように見える。
そのうえ、仙吉も門倉の心を気付いているのに口にしない。
しかし、さと子は自ら恋を知ることになる。
口に出さない恋もあるのだ、と。


門倉の気持ちに気付いていた門倉の妻・君子は
「門倉と別れるつもりだ」と仙吉とたみに言った。
しかし、
積み将棋の話題をだし、仙吉は言う。
「おかしな形はおかしな形なりに均衡があって、
それがみんなにとってしあわせなかたちということも、
あるんじゃないかなあ」

(一つずつ駒を抜いて、崩さないようにするアレですね)
ひとつが抜けたら
「みんな潰れるんじゃないですか」

ここの三人の描写がとても印象に残りました。
好きだから、口に出すとか、一緒になるとか
抱くとか、そんなことをおくびにも出さない門倉。
何も言わず温かく見守る仙吉、主人によりそうたみ。
一番大事なことは口に出さないと知った娘・さと子。

十分切ないのに、幸せという形を表現した向田邦子さんは色褪せることはありません。


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2011年01月07日

号泣する準備はできていた  江國香織



『きらきらひかる』や『落下する夕方』など多数の作品で、
揺れる女性の内面と恋愛模様を描いてきた江國香織の短編小説集。
淡く繊細な筆致でつづられた12編は、
さらりとした読みごたえでありながらも、男と女の物悲しさを秘めたものばかりだ。
第130回直木賞受賞作品。
満ち足りていたはずの恋に少しずつ影が差す様を描いた表題作「号泣する準備はできていた」、
妻のある男性との濃密な関係がずれはじめる一夜をつづった「そこなう」など、
当たり前にそばにあるものが静かに崩壊していく過程を、
江國は見慣れた風景の中に表現してみせる。
また、若かりしころの自分と知人の娘の姿を重ねた「前進、もしくは前進のように思われるもの」や、
17歳のときの不器用なデートの思い出を振り返る「じゃこじゃこのビスケット」では、
遠い記憶をたどることによって、年を重ねることの切なさを漂わせる。

各編の主人公は、もう若いとはいえない年齢の女性たちである。
家族や恋人を持ち、同性の友人にも恵まれている幸福そうな生活の隙間に忍び寄る、
一抹の不安やわずかなすれ違いは、誰もが経験したことがあるだろう。
主人公の心境が「残りもののビスケット」や「捨てられた猫」といった身近なものに投影されるのも、
江國作品の特徴である。
決してドラマチックではない日常の瞬間を切り取った物語が、
シンプルながらも美しくまとめられている。


       **    **    **

12篇からなる短編集。
切ない。ただ切ない。
何が起こるというわけでもないのですが、
ちょっとした心の隙間から切なさが漏れ、
登場人物たちを困惑させます。

ただ、その切なさから逃れるようなことはしない。
全身でそれをかぶり、味わい、堪能し
それでも毎日の生活は変化することはない。
このさき、「号泣するのだろう」と思っていても、
十分に甘んじて受ける。


最後にある「そこなう」では
不倫が15年越しで成就し、
離婚が成立してようやく恋人同士になった二人。

幸せなのだけれど、そこはかとない不安が押し寄せてくる。
楽しいこと、嬉しいことが起こる予感は
隙間から不安が覗いている。
落差が大きくて、じわりと恐怖もせまってくる。

もしかしたら、
「いつか一緒になれる」という幻を追っている時の方が幸せだったのかもしれない。
もう後には戻れない。
そこなう、とはそういうことなのだろうと感じました。

どんなに愛して、大切にしている人でも、
自分が「相手を必要としなくなった」ことに
気がついた瞬間、彼女たちはうろたえない。
号泣の準備はできていても、泣くこともできない。
切ないですね。

江國香織にしか表現できない短編集でした。
もう少し、年齢を重ねてから読み直したいです。




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2011年01月02日

2010年12月分

12月の読書メーター
読んだ本の数:16冊
読んだページ数:5209ページ

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)
再読。この軽快さ、キャラクターの濃さは再び目を通したくなります。直木賞選評で酷評した作家もいました、選評に頷けるところもありますが、それ以上に色濃く残る面白さ。それに、本に慣れていない人のきっかけにもなりやすいと感じました。
読了日:12月26日 著者:三浦 しをん
たとえ朝が来ても―約束の街〈2〉 (角川文庫)たとえ朝が来ても―約束の街〈2〉 (角川文庫)
男を追ってやってきた波崎。また、街がざわつく。前回のソルティより、波崎の方が好感が持てる。彼よりは、まだ人間臭いような気がするから。――しかし、まったくノーマークだった人物が舞台から退場となると、悲しむこともできないぞ。
読了日:12月22日 著者:北方 謙三
遠く空は晴れても (角川文庫―約束の街)遠く空は晴れても (角川文庫―約束の街)
ハードボイルド。気障な男たち。気障っぷりは見事です。セリフも今まで以上に気障。それにしても、今作は、読んでいる最中、お酒じゃなくて、コーヒーが飲みたくなってきました。キリマンジャロを。
読了日:12月21日 著者:北方 謙三
ひそやかな花園ひそやかな花園
血の繋がり、父子、家族。知らなければよかった。いや、『それでも知るほうを選ぶ、混乱して、逃げるほうを』紀子の言葉には安心しました。混乱してもいい、逃げてもいい。閉じこもるのはもうごめんだと――登場人物の繊細な心理描写、決して複雑ではなく、さらに奥行きをもたしてくれます。さすが。
読了日:12月20日 著者:角田 光代
ドラママチ (文春文庫)ドラママチ (文春文庫)
テーマは『待つ女』の短編集。後半と前半では読後感がまったく違います。どうしようもない私という個体、焦燥感、孤独感が漂いっぱなしだが、後半はそれもいいかという『光』が見えてくる。登場人物の描写がリアル。最後の「ショウカマチ」が好き。結局は帰りたくなる、いつもの家。
読了日:12月16日 著者:角田 光代
ふたたびの、荒野 (角川文庫―ブラディ・ドール)ふたたびの、荒野 (角川文庫―ブラディ・ドール)
裏で繋がっていた政治家・大河内との決着をつける、最終巻。川中が女に惚れた――と思ったら、厄介事がまたふりかかる。そうやって、彼らはどうしようもなく生きていくんだろう。
読了日:12月14日 著者:北方 謙三
聖域 (角川文庫―ブラディ・ドール)聖域 (角川文庫―ブラディ・ドール)
喧嘩もしたことがない高校教師・西尾が舞台に踊りこんできた。なんとなく、生きてきた男が“男”に変わる。ただ、この西尾、見ていて読者を物凄く不安にさせます。
読了日:12月13日 著者:北方 謙三
鳥影 (角川文庫―ブラディ・ドール)鳥影 (角川文庫―ブラディ・ドール)
別れた妻に呼ばれて厚木からやってきた立野。三年ぶりの息子との再会。不気味な大物がのっそりと姿をあらわしつつある。――父と息子、息子から男を教えられた。涙がでました。―
読了日:12月13日 著者:北方 謙三
残照 (角川文庫―ブラディ・ドール)残照 (角川文庫―ブラディ・ドール)
女を追って東京から来た下村が主人公。坂井がどんどんカッコよくなっていく。――急展開で気になる。
読了日:12月13日 著者:北方 謙三
黙約 (角川文庫―ブラディ・ドール)黙約 (角川文庫―ブラディ・ドール)
読むにつれて、とうとうこの時がきたか――と思いながら勢いよく読みました。とろろ蕎麦のシーンでは、人間臭くなった彼を一瞬でもみられて安心しました。――北方先生は好きな人物を死なせてしまいますものね。
読了日:12月12日 著者:北方 謙三
黒銹 (角川文庫―ブラディ・ドール)黒銹 (角川文庫―ブラディ・ドール)
読了日:12月12日 著者:北方 謙三
秋霜 (角川文庫)秋霜 (角川文庫)
今作は、静かな戦いっていう感覚だったかな。こんなところで悦子が帰ってきたか……。
読了日:12月11日 著者:北方 謙三
肉迫 (角川文庫―ブラディ・ドール)肉迫 (角川文庫―ブラディ・ドール)
ほんとにやんちゃな男たちだわ……。気になってしょうがない。私も『レナ』の店の常連になりたい…いや、働きたいかな。
読了日:12月10日 著者:北方 謙三
碑銘 (角川文庫)碑銘 (角川文庫)
どんどん加速してきますね。危なげな男がゴロゴロといるもんだから、手を休める暇がない。藤木…好きだなぁ。
読了日:12月10日 著者:北方 謙三
さらば、荒野 (角川文庫 (6022))さらば、荒野 (角川文庫 (6022))
ハードボイルドものは、一度踏み入れると当分抜け出すことができない、クセになります。よかった、藤木の命がつながった。手に汗握りながら読了。読み終わると、飲めもしないのに、がつんとくるお酒を舐めたくなる―私だけじゃないはず―
読了日:12月09日 著者:北方 謙三
替天行道-北方水滸伝読本 (集英社文庫)替天行道-北方水滸伝読本 (集英社文庫)
楊令伝も完結したし、読本を読みなおしました。ところどころで思いだして涙が滲んでしまった。対談も面白いが、編集長とのやりとりがクセがあっていい。そのファックスを北方さんはすべてファイリングしていたというのも頷けます。
読了日:12月01日 著者:北方 謙三

読書メーター


あけましておめでとうございます。
一年がものすごい速さで過ぎていきますね。
私はお正月が苦手です。
12月の世間が浮足立った状態は好きなのですが、
年始になったとたんに切なくなってしまうのです。

年末にはみんながみんな、おバカ丸出しで騒ぐのに
年始ともなると、ちょっと澄ました顔をするでしょう。
あれがどうも、さみしくなります。
祭のあとというのでしょうかね。


さてさて、先月のまとめ。
あきれるほど、北方先生のハードボイルドが占めております。
このままでは、まるまるひと月占領しちまう……
と、思って女流作家に手を出した感じですね。

いや、角田さんも、三浦さんも、江國さんも好きな作家です。

しかし、ノージャンルで読みたいのに、
こんなに偏ってしまって。

今年はいろんな本を読んでいきたいです。

posted by オハナ at 11:07| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書・まとめ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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