2010年10月30日

楊令伝 全15巻   北方謙三



12世紀初頭、北宋末期の中国。
かつて腐敗した政治に怒った晁蓋と108人の好漢たちは、
梁山泊を拠点に反旗を翻した。

犠牲を払いつつも局地戦で勝利を収めるが、
禁軍(近衛軍)の童貫元帥との死闘の末に梁山泊は壊滅、
宋江をはじめ多くの者が戦死した。

それから3年、残党狩りが続く中で生き残った呉用の指示の下、
呼延灼、史進たちは残存戦力を統率し、李俊は日本との密貿易で資金を稼いでいた。

侯健の遺児で顧大嫂に育てられた候真は武松、
燕青と共に燕雲十六州へ旅立つことになる。

やがて明かされた旅の目的。
それは、梁山泊壊滅時に宋江から「替天行道」の旗を託された男、
楊令の探索だった……。
 
      **         **

童貫元帥を倒し、宋は実質なくなった。

宋江らが志した、「替天行道」とは何か。
民のための国とは何なのか。

帝がいて、宰相がいて――という同じものだと、
今までとは変わらないのではないか。

民のための国。
楊令はひとりで悩み続ける。

水滸伝のころは、童貫、腐敗しきった国が敵だった。
しかし、
楊令伝では、未知の世界に入った。
楊令は、光を求めて闘う。

そして、最後に楊令が、梁山泊軍が見るものは――。

      **          **

水滸伝からの話なので、
私は、登場人物に深く傾倒してしまっています。

この人たちをどうしてくれるのか――
どんな生き様、死に様にしてくれるのか――
というのが気になって、新刊が出るたびに購入しました。

最終巻は、ゆっくり読み進めました。
完結してほしい、という思いと、
まだまだ、この人たちを見ていたい、という思いが
交錯していました。


「最後」というのもあって、
水滸伝からの登場人物が、
どうにかなってしまうと涙が溢れました。


楊令が目指したものが、正解だとかはわかりません。
国がどうなろうと、
民はそこにいるのです。


15巻完結して――
ストーリーとしては、冗長気味だったかな――
と少しだけ思います。

一つ、不満があるとすれば……
死ぬ間際の描写をもう少し掘り下げて欲しかった。
水滸伝では、これほどさらっと書いてなかったと思いますが。


15巻で印象に残った一文。

『なにかを背負うのが、生きることではないのですか、楊令殿』
張平が楊令に言った一言。
いろんなことが去来しました。



そもそも、ここに書ききれない。
書こうとしたら、一人ずつ書いてしまう勢いです。
それほど、好きな登場人物ばかりです。

北方先生、お疲れ様でした。


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また、文庫化になったら読みなおそう。
だって、
加筆修正しますから。

それもチェックしたい思いにかられます。


水滸伝

posted by オハナ at 23:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 北方謙三 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月28日

キャデラック・レコード


1947年のシカゴ。
バーのオーナーでポーランド系移民のチェスは、
才能に溢れたギタリストのウォーターズとハーモニカ奏者のウォルターと出会う。
チェスは自らのレーベル「チェス・レコード」を設立し、
2人の売り出しに成功する。
その後、ハウリン・ウルフ、ウィリー・ディクスンといったブルース・ミュージシャンから、
チャック・ベリーのようなロックン・ローラーをレーベルから輩出していく。
しかし時代の流れは、変わっていた。
50年〜60年代にかけて多くのブルースの名盤を生み出し、
また「ジョニー・B・グッド」で有名なチャック・ベリーを輩出したチェス・レコードは、米国音楽ファンにはおなじみの存在だ。
  
 **    **    **     **

エンディングが好きです。
涙が滲んできました。

低予算映画といわれていた映画ですが、
チープ感はそんなに気になりませんでした。

この時代、
黒人音楽が世に出るのは大変なことだとは聞いたことがあります。
搾取されるのは当たり前、
白人に曲を盗まれるのも当たり前、
警察に目をつけられるのは、日常茶飯事。

マディは言う。
「ブルースってのは、不条理がテーマだ」


久しぶりに、エタが聞きたくなりました。

003.jpg

そして、50年代のキャデラックが登場しますが、
めちゃカッコイイ。
当時は、
黒人がキャデラックを乗るというのは、
なんとも皮肉で遠い夢物語の象徴。

今は、
キャデには黒人が一番似合うと、私は思っています。
それは、とてもカッコイイ姿。


――「ドリームガールズ」壮大で面白い映画ですが、
「Ray」も好きです――


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タグ:映画
posted by オハナ at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

映画『人の砂漠』



内容紹介
★1970年代、20代の沢木耕太郎が見た“現実”を、2010年、20代の東京藝大生が映画化!
日本を代表するノンフィクション作家による珠玉のルポルタージュ4作を、オムニバス形式で描く!
★生きることの全てがここにあった!実在の人物の姿を通して人生の意味を問う30年前の名著を、
現在の社会に置き換えて描き、心揺さぶる傑作が誕生!


      **      **      **

沢木耕太朗が描いたノンフィクション作品を、今の現代に置き換えて映像化しています。
決して、昔の出来事ではなく、
今もそこここにある光景です。

短編30分ストーリーで、中だるみもせずに観られました。
おそらく、役者さんの味で魅せてくれたんだと思います。

カメラワークなどは、非常に単調で
初めのうちは、それが気になりました。

しかしながら、観ていくと、
単調なカメラワークがリアリティを生んでいるのだと
感じました。

ただ、エンターテイメントではありません。
ジャケットが少しPOPなので、
間違われる人も多いかと思います。

よく読んだのち、鑑賞をオススメします。

「屑の世界」
出演:石橋蓮司 監督:後閑広
綺麗に整備された住宅街に佇む仕切場。
山金属の親方・山義秀は、今日も屑の仕切り作業を続けている。
そんな中、家出をした山の孫・登がこの町にやってきて山の仕切り場で働くことに。
しかし静かな町作りを主張する区議会の声が高まり、
やがて仕切り場の強制移転が決まってしまい…。

「鏡の調書」
出演:夏木マリ 監督:ヤングポール
笠原きよらは、田舎町で「気風のいいお金持ちのお婆さん」と噂の的となっていた。
自分は身寄りもない老人で、
良くしてくれた人に財産を残したいと語る彼女だが「手元に金が無い」と言っては、
数万円を無心することもあった。
実は笠原は、いくつもの街を渡り歩き、
人々の持つ敬老の心と金銭欲とを巧みに利用した天才詐欺師だったのだ…。


「おばあさんが死んだ」
出演:室井滋 監督:栗本慎介
閑静な住宅街に、異臭を放つ一軒のゴミ屋敷。近隣住民を敬遠し、
生活保護も頑なに拒む、謎に包まれた老女、野口郁子が死んだ。
退廃する郁子の家で見つかった一冊の日記。
そこには郁子の寂しく切ない半生が綴られていた。
何故、彼女は壮絶な死を遂げなければならなかったのか。
過去と現在が交錯しながら、その謎が解き明かされていく。


「棄てられた女たちのユートピア」
出演:小池栄子 監督:長谷部大輔
親に棄てられ、精神や身体に疾患を持つ元売春婦たちが共同生活を送る施設。
人間らしい生活が約束されたその場所は、
女たちにとって楽園だったが、入所間もない篠原いちこは、
家族のように接してくる先輩入所者をうっとおしく思い脱走を繰り返していた。
そんなある日、彼女は実の家族が暮らす家を訪れるが、
もはやそこには居場所がないことに気付き…。


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タグ:映画 邦画
posted by オハナ at 16:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 邦画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月26日

(500)日のサマー


<キャスト&スタッフ>
トム…ジョセフ・ゴードン=レヴィット
サマー…ズーイー・デシャネル
マッケンジー…ジェフリー・エアンド
ポール…マシュー・グレイ・ガブラー

監督:マーク・ウェブ
脚本:スコット・ノイスタッター/マイケル・H・ウェバー
製作:ジェシカ・タッキンスキー/マーク・ウォーターズ/メイソン・ノヴィック/スティーヴン・J・ウルフ
<ストーリー>
建築家を夢見つつ、グリーティングカード会社で働くトムは、ある日、秘書として入社してきたキュートなサマーに一目惚れしてしまう。トムは運命の恋を夢見る男の子、一方サマーは真実の愛なんて信じない女の子だった……。好きな音楽をきっかけに意気投合し、いいムードになった二人。そんな中トムは、サマーに対して「彼氏はいるの?」と聞くと、サマーの答えはノーだった。恋愛と友情の間に果てしなく広がるグレーゾーン。人を好きになるって、どうしてこんなに楽しくて切ないんだろう。誰もがまた恋したくなる、二人の(500)日がはじまる!


      **           **

トムにとって運命と思えるような女性、サマーと出会う。
まさに一目惚れ。
彼女しかいない。
自分が情けなくなるときもあるし、彼女を思うと切なく、
胸が張り裂けられる――。

私は、トムがただ愛おしく思えてきました。

S1_l.gif


現実的な女性と、恋をしている男性。
愛なんて、変わるものだし、傷つきたくない。
楽しく過ごせたらいいじゃない――と思っているサマー。

トムといれば楽しい。
サマー自身も自分の心の扉を開いて、彼を招くが――……。


S3_s.gif

とにかく!!!サマーが可愛い!!!
女の子の“可愛い”と思えるような、
仕草、表情が画面にあらわれます。

私はサマーの気持ちには共感できます。
(もちろん、共感できない女性もいるとは思いますが)
しかし、基本的には、
女性は妙に、リアリストですから――。
(映画・カンバセーションズにもあるように)

「これはラブストーリーではない」
ナレーション通り、この作品はラブストーリーではありません。
トムの人生を切り取った物語、成長物語なのだと思います。

構成、映像、色彩、音楽、カメラフレーム――
ポイント使いのアニメーション。
すべてに嫌味がなく、印象的です。

脚本も、無理がないので妙にリアリティがあります。

ハッピーじゃなくてもいいから、恋がしたくなる映画です。

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タグ:映画
posted by オハナ at 22:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 洋画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年10月24日

百瀬、こっちを向いて。  中田永一


内容紹介
恋愛アンソロジー『I LOVE YOU』にて大絶賛された中田永一、
満を持しての単行本デビュー!

クラスの中で最も「人間レベル」が低い“僕”は、いわば教室の障害物のようなものだった。
いつもできるだけひっそりと気配を消している僕は、
このまま女の子と手を繋ぐこともなく、
生涯を終えるのだろう…と思っていたが、
とあるきっかけで日常ががらりと変わることに。

圧倒的な叙情と奇想! 大型新人が贈る傑作恋愛小説集。

 
    **         **

男性作家さんの恋愛モノはどうも苦手でしたが、
シンプルな装丁と、タイトルに惹かれて手にとりました。

百瀬、こっちを向いて。
読む前は、どんな状況でこのセリフが出るのかもちろんわかりません。
ただ、おそらく、男性が女性に言ったんだろう――
と、想像しました。

うん。女性からすると、
このセリフは弱い――
(私だけなのかもしれませんが)
思わず、手に取り、概要も見ずにレジに向かいました。
こっちを向いて。なんて言うから……。

さて、この作品は恋愛短編集で4作品が収録されています。

“百瀬、こっちを向いて。”
命の恩人である先輩から偽装カップルを頼まれた少年が、
はからずも相手の百瀬という少女に惹かれていく。

“なみうちぎわ”
海での事故から5年間も意識のなかった少女が目覚め、
ずっと面倒を見ていた年下の少年との関係の変化に、
ある思いを抱く。

“キャベツ畑に彼の声”
覆面作家の正体が思いを寄せる教師だと気付いた少女が、
彼に近づくものの、
別の女性の存在が浮かび上がる。

“小梅が通る”
主人公はだれもが振り返る美少女。
そのせいでたくさん痛い目にあってきたため、
あえて醜く見せる化粧を施して生きている。



恋愛小説とはいうが、年代は10代の青春恋愛ものです。
甘酸っぱいような感覚は忘れてしまいそうになるので、
たまには、軽い気持ちで読んでみるのもいいかもしれません。


好きな作品は「キャベツ畑に彼の声」です。
キャベツ畑の描写と、気持ちを抑えきれなくなった少女に、
うまくリンクしていて切ないながらも、爽快感がありました。

覆面作家がでてくるあたりも、読者をニヤリとさせますね。



個人的に面白い、と思う表現――
表題作の中で、モテない、人間レベル2の少年が
美男美女カップルと、ダブルデートをしている時の心境を……

『休日にあつまっている男女混合のなか良しグループなど、
スプラッタ映画で殺害されるために登場する役柄でしか
見たことがなかったので、
殺人鬼にだけは気をつけなくてはとおもった』


この表現、人間レベル2の少年、なかなかですね。

つまり、“大型新人”中田永一さん、仕事が細かいですね。
覆面作家ですが、正体はファンも多いと聞きます。

私は読んだことありませんが。



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posted by オハナ at 19:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ナ行の作家 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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